TS-700 系台車 (パイオニアⅢ)
更新
旧7000系から8000系までが履用していたパイオニアⅢ台車を紹介します。
概要
1962年に登場した旧7000系は日本初のオールステンレスカーとして有名ですが、台車は米国バッド社との技術提携により完成した「パイオニアⅢ」が採用され、軸ばねを廃した簡素な構造と外側ディスクブレーキでユニークなものとなりました。
東急の鉄道線では続く7200系と8000系5次車までの制御車でも、ブレーキディスクが内側になった TS-707 型、TS-708 型が採用されました。
形式 | 製造初年 | 最多履数 | 履用車両 | 現状 | 備考 |
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TS-701 動力 | 1962年 | 134両 | 7000系 | 現役 | |
TS-701 付随 | 2両 | 福島交通サハ7300形 | 消滅 | TS-701 の電装解除化 | |
TS-707 付随 | 1967年 | 23両 | 7200系、7600系 | 消滅 | |
TS-708 付随 | 1969年 | 52両 | 8000系(1〜5次車)、7200系、7600系 | 保留 | 7200系、7600系は TS-707 淘汰用 |
- 台車の製造初年は 鉄道ピクトリアル 1989年10月号 No.518 国鉄・JRおよびメーカー別の台車リスト(Ⅲ) p.109 より。
TS-701 型(PⅢ-701 型)
TS-701 動力台車
1962年に登場した旧7000系の台車として、国内で初めて採用されたパイオニアⅢ台車です。軸ばねのないすっきりした外観はPⅢ台車共通ですが、車軸端に取り付けられた外側ディスクブレーキと車体天秤梁に結合されたボルスタアンカー受けが目立ち、同台車最大の特徴となっています。また直流電動機を持つ電動車でありながら、車内騒音を考慮し車体床面の主電動機点検蓋が設けられていないことも注目点として挙げられます。
こどもの国線で最後まで活躍していたワンマンカーの台車には踏面清掃装置(リンク先写真はデハ7052)が設置されており、現在でも総合車両製作所横浜事業所の保存車に残っています。
地方私鉄に譲渡された車両も徐々に置き換えが進んでいますが、弘南鉄道と水間鉄道で活躍が続いているほか、上毛電気鉄道大胡車庫などで仮台車として活用されている例も見られます。
TS-701 付随台車
全電動車方式で登場した旧7000系ですが、1991年に福島交通へ譲渡された車両のうち3両編成用の中間車は付随車サハ7300形となり、電装解除されました。
TS-708 型(PⅢ-708 型)
TS-708 付随台車
1967年登場の7200系では電動車にペデスタル軸ばね式の TS-800 系が採用されたものの、制御車のクハ7500形のみ引き続きパイオニア台車 TS-707 型が採用されました。側梁は弓形に湾曲し、ボルスタアンカー位置は低くなっています。また、ブレーキディスクは1軸に1枚が車輪内側に配置されたため、 TS-701 型とは外観がかなり異なるものとなっています。
1969年登場の8000系でも同様に、電動車は軸ばね式台車、制御車(クハ8000形)はパイオニア台車 TS-708 型とされました。基本構造は TS-707 型とほぼ同じですが、昭和50年代に基礎ブレーキ装置のツインディスク化(リンク先写真は上田交通クハ7551)が行われています。
クハ8000形の台車は1990年より TS-815F 型に交換され、余剰となった TS-708 型台車を流用してクハ7500形および改造車クハ7600形の TS-707 型を置き換えています。しかし、クハ7600形はまもなく新製された TS-839 型に交換され、クハ7500形も上田交通、豊橋鉄道の譲渡先で2008年までに TS-800 系への置き換えが行われて稼働個体は消滅しました。台車そのものは現在も豊橋鉄道高師車庫で保管(リンク先写真は2022年4月10日撮影)されています。
写真は軌条塗油器を備えていた上田交通クハ7551 の運転台方台車で、側梁に取り付けられた油噴口が見えます。