『まどか☆マギカ』ファンの見た「Magia Day 2019」

昨日開催されたMagia Day 2019(magireco.com) に行ってきました。

このイベントはスマホゲームであるところの『マギアレコード』(以下、マギレコ)の2周年を祝うものなわけですが、マギレコそのものを主目的として来た人以外に、原作であるところのアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどか』)ファンや、声優ユニットの TrySail ファンなど、来場者はいくつかの属性に分けられたと思います。イベント自体もTVアニメ1話の先行上映、歌のライブ、ゲームに関するトークや登壇者によるゲーム内バトルと、様々な方向性の演出がありました。

私自身はあくまで『まどか』のファンとしてマギレコをプレイしており、その立場から見た「Magia Day 2019」を、これまでの動向も踏まえつつまとめてみたいと思います。

  1. マギレコの位置づけ
  2. マギレコと『まどか☆マギカ』
  3. Magia Day 2019 での『まどか☆マギカ』
  4. マギレコアニメ1話と『まどか☆マギカ』
  5. マギレコの後に『まどか☆マギカ』新作を

マギレコの位置づけ

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まずそもそもマギレコとはなんなのか。なぜマギレコが作られることになったのか。これについてはアニプレックスのプロデューサーとして『まどか』に関わった岩上敦宏氏がゲームのリリース前(2017年2月)に発売された雑誌でこんな発言をしています。

アニメの新作がもう少し時間がかかりそうなこともあり、何か『まどか☆マギカ』のキャラクターが活躍できるようなタイトルを作りたい。そんなアイデアが最初のきっかけでした。

新房昭之とMagica Partner 第12回(「まんがタイムきらら☆マギカ」vol.30)

これをどこまで言葉どおりに受け取って良いかは議論の余地があると思いますし、アニプレックスの社長としての立場からの発言ということも加味する必要はありますが、最終目標は『まどか』の新作を作ることであると解釈しています。

マギレコと『まどか☆マギカ』

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ゲームのメインストーリーにおいて、鹿目まどか、暁美ほむらをはじめとする『まどか』の魔法少女(以下、原作組)はあくまで神浜市の魔法少女の手助けを行うといった程度の役割です。巴マミに関しては一時マギウス側に就くなどそれなりに重要な役割を持っていますが、それを担うのは必ずしも原作組である必然性はなく、マミでない他の魔法少女に差し替えてもストーリーの整合性は崩れません。マギレコにおいて原作組が登場しているのは、岩上氏が『まどか☆マギカ』のキャラクターが活躍できるようなタイトルを作りたいと発言していたように、その目的ありきのものであると考えられます。

これは純粋に原作ファンに対するサービス、あるいは作り手側の原作への愛着も当然あるでしょうが、マギレコの訴求施策として、例えば駅ポスターは美樹さやかとアルティメットまどか登場時に特に大々的な展開が行われ、百江なぎさ登場時には新聞で一面カラー広告が掲載されるなど、ストーリーでの活躍度合いと比べて原作組の宣伝での扱われ方が不自然なまでに大きいということからも、マギレコは『まどか』の知名度に頼った展開をしているという見方ができます。

とくに違和感があったのは2019年7月にロサンゼルスで行われたAnime Expo 2019でのパネルトーク(aniplexusa.com) で、マギレコのイベントにもかかわらずキャストの登壇者が斎藤千和、加藤英美里の二人というものでした。トークそのものは非常に質の高い内容が展開され、直接聞きに行った私としても渡米した甲斐があったというものですが、一方で登壇キャストの人選については「マギレコのイベントとしてそれでいいのか」と首をかしげざるを得ませんでした。

一方で、マギレコのTVアニメに関してはこれらとは異なった意識が感じられます。2018年9月の「Magia Day 2018」で初めてアニメ化が告知された時のティザーPV(YouTube) でのメインビジュアルこそ、いろはにバトンタッチするような形でまどかが描かれていましたが、2019年3月に公開された第2弾ティザーPV(YouTube) に原作組の姿は描かれていません。

ゲームの宣伝では原作組を推すのにアニメの告知には描かれない。その理由は何でしょうか。アニメになくてゲーム(ソーシャルゲーム)にあるものと言えば……。マギレコの運営側にとって、原作組の価値は何かということが如実に表れていて面白いところだと思っています。

Magia Day 2019 での『まどか☆マギカ』

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さて、「Magia Day 2019」の話になりますが、事前発表での登壇者はマギレコオリジナルキャラクターのキャストと司会者のみでした。これまでのマギレコのトークイベントでは下表のように必ず原作組キャストがいたのとは対照的です。

時期 イベント名 登壇者
2017年3月 Anime Japan 2017(www.anime-japan.jp) 麻倉もも、佐倉綾音、悠木碧、蒼樹うめ、外山裕介
2017年12月 f4ファンフェスティバル(web.archive.org) 麻倉もも、佐倉綾音、野中藍、加藤英美里
2018年9月 Magia Day 2018(magireco.com) 麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜、佐倉綾音、小倉唯、悠木碧、斎藤千和、加藤英美里、蒼樹うめ、外山裕介
2019年7月 Anime Expo 2019(aniplexusa.com) 斎藤千和、加藤英美里、久保田光俊、外山祐介、佐藤允紀

シークレットゲストとしての原作組キャストの登壇についても、その可能性は低いだろうと考えていました。というのも、本イベントではマギレコTVアニメの詳細解禁がメインになるであろうことは明白であり、前述のとおりアニメ関係で原作組をことさら前面に出すことはしていなかったからです。

あるいはここでマギレコではなく『まどか』新作の告知をするのも違うだろうと。とはいえ、冒頭で1話の先行配信が終わった後、「Surgam identidem」のBGMとともに『まどか』本編のワルプルギス戦の映像が流れ出したときは「もしや」と緊張感が高まり、直後に ClariS のシークレットライブであることが分かり安堵したものでしたが(笑)。ともあれ、本イベントにおいての『まどか』要素は ClariS が「コネクト」「カラフル」を歌っていたときのバック映像くらいで、前年の「Magia Day 2018」に比べると(おそらく意図的に)抑えられている結果になりました。

マギレコアニメ1話と『まどか☆マギカ』

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「Magia Day 2019」、およびアニメ第1話で原作組の存在がほとんどなかったことについて、感じ方は人それぞれでしょうが、私個人的にはマギレコと『まどか』の距離感としていい案配になっていると感じました。

ゲームのマギレコにおいて、原作組がゲーム内のイベントストーリーや衣装バリエーション、駅広告などで破格の扱いを受けていることには、自分の好きなキャラが好待遇なことに素直な喜びを感じる一方、「外伝」の看板に頼ったやり方から抜けきれないのではないのかという作品展開そのものに対する懸念を抱いていましたし、そういうモヤモヤした心情を抱えつつゲームをプレイし続けることに自問自答もしています。そして、アニメもその延長線上にあったら嫌だなと思っていました。

しかし、上映された1話はゲームのストーリーとはまったく異なる見せ方をしており、良い意味での改変をされています。詳細を書くと現地に行っていない人にはネタバレになってしまうため、アニメ版公式サイト(anime.magireco.com) やPV映像から容易に推測できるであろう範囲の言及にとどめますが、ゲームのメインストーリーのプロローグでは『まどか』10話の「委員長の魔女」戦からスタートしたのとは異なり、いろはと黒江が住む宝崎市のシーンから始まります。

TVアニメ「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」PV(YouTube)

ゲームのプロローグが「委員長の魔女」戦からスタートしたのは、『まどか』10話から分岐した物語であることをプレイヤーに説明する必要があったからだと当初は考えていたのですが、今にして思えば理由はそれだけではなく、リリース当初のプレイヤーは大半が『まどか』ファンであり、そういったユーザーを違和感なくマギレコの世界に入れるにあたり、まずは原作と同じ展開から見せ始めるという手法が必要だった面もあるのではないかと思います。

アニメではゲームをプレイ済みの人にとっては今さらそういう説明描写は不要ですし、逆に『まどか』を見たことのない新規の視聴者に対しては、いきなりマギレコの世界を見せても問題ないため、このような導入部分の変更ができたのではないでしょうか。一方、ラストで流れたオープニング(?)映像の中に1カットだけ原作組が描かれている箇所があったので、アニメへの登場がまったくないというわけではないと考えられます。

第1話の時点では視聴者はアニメのストーリーがどういうものになっていくか分からないため、変に原作を意識せずマギレコそのものの世界観に没頭できるという意味でこの改変は好意的に捉えていますし、「とはいえ原作ファンとしては原作組の活躍も少しは見たい」という欲求はオープニングのカットの存在により後の話数に期待という形で保留できます。こだわり強めの繊細なお客さん(X) も思わずニッコリ。

マギレコの後に『まどか☆マギカ』新作を

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前述したとおり、マギレコの先に『まどか』の新作を作るという目標があります(あると信じています)。

2015年の「コンセプトムービー」の公開時点でMagica Quartet による制作会議は続いているとのことですし、つい先日もAnime Expo 2019でのパネルトーク(aniplexusa.com) において斎藤千和氏の口から『まどか☆マギカ』の方も終わっていませんという発言があるなど、『まどか』のプロジェクトは水面下で続いているようです。

マギレコのアニメ放送が終了した際、あるいはゲームのストーリーが一段落したあたりにでも、本来の目的である『まどか』新作に関する動向が発表できる状況になっていることを願わずにはいられません。