コミックマーケット96 4日目 鉄道本(東急関係)

C96の4日目、今回は自分も鉄道島でサークル参加したため、買い子の方に鉄道島を回っていただきいくつかの本を購入しました。その中で東急電車に関連した本の感想を。

  1. 西え09a 東横商会「ななななよろよろ」
  2. まるく製作所「デンシャラウンドファイナル TKK8500系外観資料集」

西え09a 東横商会「ななななよろよろ」

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養老鉄道に譲渡された7700系の形態解説本です。

こちらのサークルでは1年前のC94でも「ななせんななひゃくのほん」という東急7700系の形態に詳しく迫った本を発行されているのですが、引き続き譲渡後の姿に迫った特集を組まれるとのことで楽しみにしていました。

養老鉄道7700系の改造点といえば、転換クロスシートをはじめ客室内の変化が目立つところですが、床下機器や屋根上、乗務員室内なども手を加えられており、本書では旅客向けステッカーや床下機器の保守用マーキングなどの細部に至るまで詳細に調べ上げています。

以下、気になったところを。

  • p.1: モ7714の「種車入籍日」(東急デハ7062)が 1966.02.07 となっていますが、正しくは 1966年9月10日 です。
  • p.1: モ7712、ク7912の「改造入籍日(東急)」が 1987.07.31 となっていますが、正しくは 1990年1月24日 です。
  • p.1: モ7812の「改造入籍日(東急)」が 1988.10.29 となっていますが、正しくは 1990年1月24日 です。
  • p.1: モ7714、モ7814、ク7914の「改造入籍日(東急)」が 1987.12.01 となっていますが、正しくは 1991年6月4日 です。
  • p.3: 「部品取車兼倉庫代用(デハ7806)」の解説文でクーラーキセの蓋と貫通路を塞いでとありますが、「クーラーキセの蓋」は開口部のことではないかと思われます。蓋を塞いだのではなく、「開口部に蓋をした」が正しいのではないでしょうか。
  • pp.4-5: 「速度計保証器」の表記がモ7700の「速度計保証器」とク7900の「速度保証器」で揺れています。また、「保証」ではなく「補償」です。
  • p.5: 列車種別選別装置(アイデントラ)(台車裏)台車の順です。の部分、最後の「台車」の前に読点が抜けています。
  • p.6: 何か所か半角カナが用いられているのが気になりました。他のページには見当たらないので、意図的なものではなく誤変換かと思われます。
  • p.6: TQ03のク7903は東急時代に前面を大破する事故に遭っておりとありますが、大破というと前面全体が破壊されたレベルを連想してしまいます。1997年のクレーン車との衝突事故で起こった破損は小破か、せいぜい中破ではないでしょうか。
  • p.9: レスポンスブロック受け撤去跡は一部のク7905、ク7906、ク7912のの部分、「一部の」は不要ではないでしょうか。
  • p.9: 一覧表のIRアンテナ跡の表記で「上ネジ4、下板付ネジ4」などという表記、自分も個人的な現車調査メモではほとんど同じ表現をしていたのでつい笑ってしまいました。まあ短く表現しようとするとこうなりますよねえ。

養老鉄道7700系は現在進行形で増備(改造工事)が進んでいるため、全車が揃ったところで改めてこういった形態本を出していただけたらと思っております。

  • あと、各パーツの写真をもう少し大きく掲載していただけると個人的には嬉しいです!

まるく製作所「デンシャラウンドファイナル TKK8500系外観資料集」

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田園都市線の8500系の形態分類解説と形式写真紹介をメインとした本です。タイトルのとおり調査対象は外観のみで、本の内容やあとがきの記述から察するに著者は車両研究家というよりは模型車両の制作者であり、その視点から車体や屋根上など模型制作において重視する点をまとめた本といったところでしょう。ゆえに足まわりや床下機器にほとんど言及されていないのは残念なところですが、連結面形態の豊富なバリエーションや、2019年度末時点での現有全車両の形式写真を海側、山側両方とも漏れなく収録されているのは貴重な資料になっています。

以下、気になった点です。

まず全体的なものとして、基本的に本書の内容は8500系のみに焦点を絞っているのですが、ところどころ「12-3次車」に言及しているなど、8000系グループ全体を指した表現が混在しているのが気になりました。例えば p.7 の12-3次車と13次車(ただし8500系は13次車のみ存在)は屋根布(12-3次車)または塗り屋根(13次車)の開始位置が高く非常に目立つ。という一文は、わざわざ「ただし8500系は13次車のみ存在」という注意書きがあることから8000系グループ全体の記述と思われますが、それなら屋根の開始位置が高いのは12-3次車と13次車のみではなく、8090系、8590系全車もそうなのですがその記述がありません。

また、 p.7 にはドア間座席が7人掛けになったという部分で、ここにも12-3次車への言及がありますが、8000系グループ全体で言うなら12-3次車以前のうち8000系軽量試作車、8090系12-1次車も7人掛けです。

他にも方向幕や網棚など、8000系グループ全体の視点で見ると誤りと言える記述がいくつも存在します。個人的にはこの本はあくまで8500系の本なのですから、中途半端に8000系や8090系の存在を考慮する必要はないと思いますし、逆にそこに触れるのであれば、12-3次車だけでなく12-1次車などの存在も考慮した記述をすべきです。

上記はあくまで8500系に限った視点で言えば間違ってはいない事になりますが、以下は明確な誤り(あるいは意味の分からない記述)です。

  • p.4: 屋根更新車(内装等の更新とは別)という記述がありますが、ちょっと意味が分かりませんでした。8500系の屋根改修は車体更新工事において室内を中心とした改修と同時に施工されたものという認識です。その後未更新車ながら屋根改修のみ行われた車両も存在しますが、「内装等の更新とは別」という表現と実情は合わないように思います。どういった意味なのか著者からの補足が欲しいところです。
  • p.5: 18次車以降の車両について「編成増備車」「中間組込車(18-1次車)」「中間組込車(18-2次車以降)」の3タイプの分類をしていますが、8642Fの東横線→田玉線転籍に際して増備された21次車については中間組込車ながら「編成増備車」と同様の形態となっているため、正確には「編成増備車および21次車」「中間組込車(18-1次車)」「中間組込車(18-2次車〜20次車)」といった表現が妥当でしょう。
  • p.6: 屋根の絶縁方法が「非軽量車:屋根布」「軽量車:絶縁塗料」と書かれていますが、これは製造当初の違いであり、現在の(屋根改修後の)状況からすると誤解を招く表現になっています。
  • p.6: アーク溶接痕のバリエーションについて「非軽量車:間隔広く色は薄め」「軽量車:間隔狭く色は濃いめ」との解説がなされていますが、色に関しては非軽量車/軽量車の区分は無関係です。色が濃くなったのは9次車からなので、9〜12次車の中には「色の薄い非軽量車」が存在しますし、また8642Fの運用離脱により消滅してしまいましたが、つい先日まで「色の薄い軽量車」もいました。
アーク溶接痕の色が濃い非軽量車の例(デハ8739・9-2次車)
アーク溶接痕の色が薄い軽量車の例(デハ0818・21次車)