国会図書館に同人誌を納本し、納入出版物代償金を受け取った

先月のことですが、平日に国会図書館に行く機会があったので、今まで発行した同人誌のうち一部を納本し、納入出版物代償金を受け取りました。面倒な手続きがあるんだろうなあと思っていたら、意外とすんなりできてしまったので、その記録を残しておきます。

納本した同人誌「円環ピクトリアル」(3種)

納本は法律で定められているもので、民間の場合、国立国会図書館法(PDF)(www.ndl.go.jp) の第二十五条で以下のように定められています。

前二条に規定する者以外の者は、第二十四条第一項に規定する出版物を発行したときは、前二条の規定に該当する場合を除いて、文化財の蓄積及びその利用に資するため、発行の日から三十日以内に、最良版の完全なもの一部を国立国会図書館に納入しなければならない。但し、発行者がその出版物を国立国会図書館に寄贈若しくは遺贈したとき、又は館長が特別の事由があると認めたときは、この限りでない。

国立国会図書館法(改正 平成二十八年十一月二十八日 法律第八十九号)(PDF)(www.ndl.go.jp)

ここで言う「前二条に規定する者以外の者」とは、納本制度の概要(www.ndl.go.jp)出版社、新聞社、レコード会社、映像資料の発行社といった販売を目的とした出版者だけでなく、学術団体、調査研究機関、企業・団体等の出版者も対象となります。と書かれていることから、コミケットなどで言う「サークル」も対象であると考えられます。

納本は無償で行うこともできますが、同じく第二十五条の第三項では以下のように代償金の交付が規定されています。

③第一項の規定により出版物を納入した者に対しては、館長は、その定めるところにより、当該出版物の出版及び納入に通常要すべき費用に相当する金額を、その代償金として交付する。

国立国会図書館法(改正 平成二十八年十一月二十八日 法律第八十九号)(PDF)(www.ndl.go.jp)

「その定めるところにより」とあるように、どんなケースでも代償金が支払われるものではなく、Q&A―企業・団体、個人(www.ndl.go.jp) を読むと以下のような基準が書かれています。

  • 書店で一般に頒布される出版物、通常の自費出版物等については、100部刊行されていることを基準とします。
  • オンデマンド出版の場合は、15部が実際に頒布されたことを基準とします。
  • 納入出版物代償金の申請手続きについては、必ず、出版物をご送付いただく前に、電話にてお問い合わせください。

また、受け取れる金額については通常、小売価格の5割と郵送における最低料金に相当する金額とされています。

  1. 電話
  2. 来館時の持参物
  3. 来館(東京本館)
  4. NDL ONLINE への反映
  5. 入金

電話

§

納入出版物代償金を申請する場合、Q&Aに出版物をご送付いただく前に、電話にてお問い合わせください(www.ndl.go.jp) と書かれていたので、まずは電話をしてみました。EメールやSNSでの問い合わせではダメなのかというもやもやがありつつも[1]、ともかく電話。

郵送で納本する場合、こちらの住所を伝えて先に必要書類を送ってもらう手続きがあるのですが、今回は来館で納本するつもりでしたから、その旨を伝えると事務的な説明(公式サイトを読めば分かること)やちょっとした確認があるだけでした。電話の条件はあくまで「出版物をご送付いただく前に」なので、来館持ち込みの場合は電話することなくいきなり来館しても問題ないと思います。

来館時の持参物

§

電話口で質問したところ、以下の4つが必要とのことでした。

  • 納本する現物
  • 印鑑
  • 代償金の入金先情報(銀行口座)
  • 本に販売価格が書かれていない場合、価格を証明できるもの(私は販売告知のWebページに価格を書いていたので、それを印刷していきました)

自身が本当に著者であるかの証明や、販売価格が正しいものである証明(上記のようにWebページの印刷では、やろうと思えば価格偽装は簡単なので)は必要かも尋ねたのですが、とくに必要ないとのことでした。これはあくまで私の場合であり、分量が多い場合や価格が高額な場合にどうかは分からないので、各自で個別に聞いた方がいいかもしれませんが。

来館(東京本館)

§

納本の窓口は東京本館(www.ndl.go.jp) の通常の入口とは異なり、西口になります。取扱時間は平日の9時〜17時45分と、これも図書館本体とは異なる時間となっています。

東京本館の西口

建物入ってすぐの受付で守衛さんに納本のための来館であることを告げると、記帳のうえバッジを渡され、それを胸に付けて薄暗い通路を進みます。

納本受付は小規模なカウンターで、待機用の椅子は2つか3つだったと思います。私が行ったのは10時頃でしたが、手続きを行っていた間、他には誰も来ませんでした。わざわざ来館して納本するような物好きはそう多くはないのでしょう。

ここで本の現物を渡し、書類に本の名前や価格、口座情報などを記載します。

私は当日、口座情報を控えておくのを忘れてしまい、その場でノートPCを起動して銀行のインターネットバンキングにログインして確認する羽目になり、対応された係員を数分間待たせてしまいました(ごめんなさい)。ちゃんと事前にメモっておきましょう……。

そんなちょっとしたバタバタがありつつも、3冊だけなので手続きは10分も掛からず終わりました。

NDL ONLINE への反映

§

何日かすると、国立国会図書館オンライン(ndlonline.ndl.go.jp) に登録されました。それぞれ2部ずつ納本したため、東京本館と関西館それぞれに収蔵されています[2]

NDL ONLINE の検索結果画面(書誌データ修正前)

実際に検索してみると、タイトルにキャッチコピーが含まれている[3]一方、それぞれの本を区別する最大の情報であるサブタイトル(特集名)が入っていないなど、書誌データに若干の不満があったので、問い合わせフォーム(www.ndl.go.jp) から修正を申し出たところ、翌日には返信が返ってきてこちらの要望を反映していただきました。

NDL ONLINE の検索結果画面(書誌データ修正後)

もちろんケースバイケースでしょうけど、明らかな誤りでなくとも、ある程度著者の意向は受け入れていただけるようですね。

入金

§

そして1か月ほど経って、銀行口座に「振込1 コクリツコツカイトシヨカン」の名前で入金が行われました。今回納本した3冊の合計金額が5,000円なので、その半額の2,500円が振り込まれています。

その数日後には自宅宛にハガキによる「国庫金振込通知書」が届きました。

国庫金振込通知書

これで自宅が全焼して在庫が焼失したり、私が死んで電子書籍の公開が停止されるような事態になっても、国会図書館自体が潰れない限りは半永久的に保存され、満18歳以上であれば国籍を問わず誰でも閲覧することが可能な状態が維持されます。

2022年8月27日追記本記事を見た漫画家の牧田理恵 氏が「同人誌の納本で代償金を受け取る行為はぼろ儲けであり、商業出版物以外は寄贈に限った方が良い」という旨の主張をしていました。これは根拠のない中傷行為であり、またそれ以上にプロの漫画家でありかつコミケ参加経験もある方が納本制度についてそのような理解をされていることを残念に思います。本件については別途 note 記事にまとめました。☞高めの本をコミケで頒布し、国会図書館の納本制度で代償金を受け取ったら漫画家の牧田理恵 氏から「ぼろ儲け」と非難された(note.com)

脚注

  • 1.

    日本語が苦手な外国人や、発声障害、聴覚障害のある人は音声手段による申請手続きがやりにくいのではないか。 ↩ 戻る

  • 2.

    代償金の支払いは1冊分で、2冊目以降は無償。 ↩ 戻る

  • 3.

    検索情報としてはあまり意味がないうえに、一部の号数にしか入っていないのがちょっとアレなので入れてほしくなかった。 ↩ 戻る