東急サハ9700形の誘導無線(IR)準備工事

東横線の9000系がすべて5連化されて大井町線に行きましたね。

編成から抜かれたデハ9300形、サハ9700形、サハ9800形はおそらくすべて廃車されて形式消滅になるのでしょうけど、そのうちサハ9700形のIR準備工事について書いてみたいと思います。

もともと、9000系は目蒲線(目黒線)と相互直通運転を行う7号線(南北線)、三田線でも使用される想定で造られ、随所に営団、都交乗り入れの準備工事が成されていました。

3号車に連結されるサハ9700形には誘導無線(IR)の準備が行われており、両妻面の左右(計4か所)にはアンテナ取り付け用と思われるネジ穴が用意されていました。妻アンテナは上下2か所で車体に取り付けられるものですが、下部は金属片を介してネジが留められている一方、上部の処理は車両によって異なり、以下の3タイプが存在しました。

  • 1次車(9701): ネジ穴なし
  • 2, 4次車(9702〜9706, 9714): 金属片 + ネジ
  • 3, 5次車(9708〜9713, 9715): ネジのみ
東急サハ9714のアンテナ取り付け準備

さて、誘導無線方式は駅間では線路沿いに敷設した架空通信線とこの妻アンテナで通信を行いますが、駅ホーム部などはレール間に通信線があり、車両側は床下のアンテナを使用します。

駅間のIR架空通信線(日比谷線 中目黒駅付近)
駅ホーム部のIR平行2線(日比谷線 中目黒駅)

東急9000系では1次車のサハ9701のみ、アンテナ支持用と思われる架台が2か所用意されていました。2次車以降の13両には見あたらず、なぜ1次車のみ用意されていたのか、そもそもこれは本当にIR用のものだったかは謎ですが。

東急サハ9701の床下IRアンテナ取り付け架台(?)

結局、南北線は空間波無線方式(SR)が採用されることになり、三田線も相互直通を前にSRに変更されたので、仮に目黒線に9000系が投入されたとしてもIR装置が搭載されることはなかったのでしょうが、こんなものもあったということで。

(参考)日比谷線直通用1000系に搭載されていた誘導無線送受信機