大井川鐵道クハ861のKS-33形台車

まただいぶ間が空いてしまいましたが、山中温泉に保存されている"しらさぎ"号とKS-33形台車の続きです。

大井川鐵道には以前クハ861という珍車が在籍していました。この車両は名古屋鉄道3800系を譲受したもので、当初は普通の電車(クハ510)として活躍していましたが、1986年に側面を切り抜いたオープン車両へ改造されたようです。

その後、10年以上前に廃車されたものの、解体はされずに千頭駅構内に長らく置かれていましたが、最近になって新金谷の構外側線(大代川側線)の末端部に移動されており、去年の春に機会があったので様子を見てきました。

まずは、大井川鐵道に在籍した名鉄3800系譲渡車についてまとめてみます。

  • モハ310-クハ510(名鉄モ3805-ク2805、1970年譲受)
  • モハ3822-クハ3822(名鉄モ3822-ク2822、1972年譲受)
  • モハ3829-クハ2829(名鉄モ3829-ク2829、1972年譲受)

ただし、1972年譲受の4両は在来車の改造名義で、台車や機器は流用品とのこと。これらの前歴は次のようになっています。

  • モハ3822(←モハ303)
  • モハ3829(←モハ301)
  • クハ2822(←クハ504)
  • クハ2829(←クハ502)
  • 鉄道ピクトリアルNo.652(1998年4月臨時増刊号)の藤岡雄一氏の記事や私鉄の車両14(Amazon) より
  1. 現車の様子
  2. 台車
  3. 台車の来歴について

現車の様子

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車体はかなり錆が進行しており、車内もオープン客車で雨ざらしということもあり床板が腐って抜けているなど状態は悪いです。

大代川側線に置かれているクハ861(2012年撮影)
同じくクハ861の金谷方(2012年撮影)

台車

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台車は住友金属のKS-33形です。

クハ861のKS-33形台車

クハ6060形ナロ80形、スイテ82形とは異なり、枕ばねのオイルダンパ化は行われておらず、板ばね(3列)のままとなっています。また、軸受けはコロ軸です。

台車銘板については、千頭方(運転台側)の台車は破損しているものの、金谷方はほぼ完全な形で残っており、「扶桑金属」「昭和24年3月」「KS-33E」の文字が読み取れました。E形で昭和24年(1949年)製ということは、小田急か近鉄で使われていたものと思われます。

さらにこの台車、釣合ばね下部の受け座(Equalizer Spring Seat)が釣合梁に乗っている部分の"守"(と呼んでいいのでしょうか?)が比較的大型になっています。過去の写真と比較すると、小田急電鉄の1900形などが履いていた台車と同じタイプに見えます。

クハ861台車の釣合ばね座

台車の来歴について

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もともと名鉄3800系は日車ボールドウィン型を履いていましたが、一部の車両は同社3880系の廃車発生品である住友金属のKS-33形に換装されていたようです。以前の記事と同じく、私鉄の車両11(Amazon) から引用します。

また,東急からのピンチランナー3880系は,昭和60年(1985)までに全廃されたものの,その足であった住友のKS-33Eは,瀬戸線のク2780形や本線系のク2800形の一部にまで再用されている。

私鉄の車両11 名古屋鉄道

ただしこの車両が大井川鉄道に入線したのは、名鉄3880系の廃車どころか、同車種が東急電鉄から名鉄へ譲渡された時期よりも前なので、当初はKS-33形ではなかったはずです。

一方、当時(1970年代)の同社の他の車両を見ると、クハ2822がKS-33形を履いていたようです。そして、大井川鉄道 2822 の写真(鉄道車両画像のページ)(rail-1.kokuden.com) に掲載されている写真を見ると分かるように、同車は晩年には別の台車となっていました。

ということは、いつかの段階で(オープン車に改造されたとき?)台車を振り替えたのでしょうかね。